一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会

訪日市場 Expert eyes(2022年5月31日配信)

訪日市場 Expert eyes(2022年5月31日配信)

岸田文雄首相は5月26日、東京都内で講演し、6月10日から訪日外国人観光客の受け入れを再開すると表明しました。当面は添乗員付きのパッケージツアー客を受け入れる方針で、首相は「今後も感染状況を見ながら、段階的に平時同様の受け入れを目指していく」と述べました。

感染リスクが低い「青」区分の国・地域から

観光客としての入国を認めるのは検疫措置の分類で感染リスクが最も低い「青」区分の国・地域に当面は限定されます。入国者ベースで8割程度にあたる98カ国・地域がこの区分に該当します。(「青」区分の訪日観光主要国・地域)イタリア、インドネシア、英国、オーストラリア、カナダ、韓国、シンガポール、タイ、台湾、中国、フィリピン、フランス、米国、香港、マレーシアなど、「青」区分の国でも実際に訪日が始まるかどうかは相手国の国際渡航の管理意向によるため、人流規模・消費金額ともに最大のターゲットとなる中国からの訪日はまだ時間がかかるものと思われます。一方で「青」区分の多くの国では、ツーリストも旅行会社も訪日観光再開を今か今かと待っており、軌道に乗れば訪日観光は間違いなく劇的な回復をみせると思われます。どのような回復曲線を描くのかとても楽しみです。

写真=iStock

外国人観光客受け入れの実証実験

それに先駆けて、5月24日から少人数訪日ツアーの実証実験が開始され、米国からの人は日光、シンガポールからの人は南紀白浜など、各地で受け入れを行っています。 ツーリストは「(マスクは)日本人と旅行者を守るためには必要です」、「外国では外国の規則に従うものです」と話していたため、“外国人観光客だから”という感染リスクに関する過度の警戒心は今後も杞憂に終わることを祈っていました。 残念ながら今回のツアー中に1名のコロナ陽性者がでてしまいましたが、実証実験とはその対応も含めたものであり、「感染防止」と「感染者対応」はワンセットでガイドラインに反映させていけばよいと考えます。withコロナで国際観光再開に踏み切るということはこのような事態とも向き合っていくということで、同様の対応が常態となっている世界と歩調を合わせるということでもあるのです。

写真=iStock

外国人観光客と相思相愛でいるために

観光産業は日本の経済を支える大きな柱です。 そして、日本にとってのインバウンドは自動車産業に次ぐ重要な輸出産業でもあります。 それはコロナ前まで、外国人観光客が日本を愛してくれて、日本各地の事業者がその想いに応えるべくおもてなしをした結果です。 そのスタンスは変えてはいけないものなのです。 コロナ感染の「加害者」はいません。外国人も日本人も「被害者」です。 外国人観光客はコロナ感染の媒介者ではありません。今後「外国人観光客はマスクをつけてくれるだろうか」という心配も、「この暑さの中、マスク着用に協力してまで日本に来てくれた」と考え方を変えるだけで、おもてなしも1ステージ上がりそうな気もします。コロナ感染による「外国人観光客受け入れの賛否」という国内世論の分断が起きないように、少なくとも私たち外国人観光客に近い立場では、今まで以上に丁寧に現場対応していかなければならないと考えています。

ジャパンショッピングツーリズム協会
訪⽇市場チーフアナリスト 神林淳氏

首都圏百貨店において、婦人服・リビング用品バイヤーを経て販売推進部に11年間所属。販売促進・広告・広報・装飾などに携わりながら、地域密着の方針のもと店舗営業計画の策定を行う。2016年、USPジャパンに⼊社。⽇本百貨店協会をはじめ、多くの⼩売事業者のインバウンド対応アドバイザーに従事。近年は東京都派遣型アドバイザー・セミナー講師として、飲食店、観光施設、宿泊施設・交通事業者など多岐にわたるインバウンドサポートを⾏っている。またインバウンドの諸問題解決のために国土交通省と連携した「境港の港湾免税販売」や「横浜港のクルーズ事業活性化」の実証実験を担当。⼀⽅で、経産省と連携して「プレミアムフライデー」の啓蒙および地⽅案件プロデュースも⾏っている。観光庁「世界⽔準のDMO形成促進事業」における外部専⾨⼈材に選定。

本件に関するお問い合わせ
  • MAIL:pr@jsto.or.jp

  • 情報戦略・広報部 池田大作

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