訪日市場 Expert eyes(2022年7月15日配信)
本格的な訪日再開1秒前、気になる韓国人の対日意識の変化
直近の調査、韓国人が1年以内に旅行したい国は「日本」
クレジットカード大手のVISAは11日、コロナ以降に変化した韓国人消費者の海外旅行に対する認識と態度を調査した結果を発表しました。今回の調査はソウル、仁川、釜山などに住む20歳以上59歳未満の男女1000人を対象に、5月27日から6月8日まで行われたものです。
調査では、回答者の82%が海外旅行を具体的に計画しており、さらに59%が1年以内に海外旅行を計画していることが分かりました。
1年以内に海外旅行を計画していると回答した人のうち20.5%は、その旅行先に日本を選択しました。その他、ベトナム(9.7%)、タイ(8.2%)、米国(6.5%)、シンガポール(5.2%)などが選ばれました。
この結果に韓国のネットユーザーは「日本は近くて行きやすい。それに清潔さもポイント」、「日本は旅行先としては最高。親切で清潔で食事がおいしい」、「僕も日本に行きたい。あの独特な雰囲気が大好き」など納得する声が上がっているそうです。
訪日韓国人が激減した2019年
調査の結果を見ると、韓国人観光客が再び日本各地を賑わしてくれる期待が膨らみますが、一方では経験的な不安も頭をよぎります。
私の周りには韓国人の戻りを心配する方が多く、そのほとんどの方は2019年当時の訪日韓国人の激減を経験しているからです。
2019年の「No Japan」こと「日本製品不買運動」を契機にした破壊的な日韓関係の悪化は、2019年の訪日韓国人数前年比マイナス25.9%という結果を生みました。特に同年7月以降は減便や運休による航空座席供給量の減少や訪日旅行を控える動きが発生したことから、8月以降の訪日韓国人数が前年比半減の状況が続き、10月が 65.5%減、11月は 65.1%減、12月は 63.6%減と低調に推移したのです。
あの急降下を経験している方が韓国人来訪に不安を抱えているのも無理のないところなのです。
訪日韓国人観光客の反転回復が期待できる3つのエピソード
それでも今、私は訪日再開初動のタイミングで韓国人受入れを強く意識した方が良いと考えていますが、その根拠となるトピックスを3つご紹介します。
1.日本の街並みを再現した韓国内のテーマパークが大人気
日本家屋を再現した旅館や店舗が軒を連ねる異色の空間「にじもりスタジオ」(2021年9月オープン)が、韓国ソウル北方のトンドゥチョン市にあります。
山あいの温泉街を思わせる3.3ヘクタールの敷地に、貸衣装や土産物店、食堂、茶室などが並んでおり、地域の活性化に貢献するとして韓国政府の支援も受けています。
ここがコロナ禍で日本旅行に行けなかった韓国人に「日本の情緒が感じられて楽しい」と人気を集めており、多い日には数千人が来場し、週末には高額旅館も満室になるそうです。
人気の理由を施設側は以下のように話しています。
「韓国では自然や伝統がどんどん消えていく。日本にはまだ「神秘性」が残っており、その再現が受けているのだと思う。両国の関係を問題視する人もいるが、両国の市民は互いの文化が好きなので、今では人気スポットになり、ファンが擁護してくれている。」
若い世代を中心に、「無条件の反日」には逆に抵抗感があるようです。
2.「No Japan」運動の終了?
韓国コンビニ業界は5月、約3年ぶりに日本製ビールの割引キャンペーンを再開しました。日本製品に対する不買運動が小康状態になり、輸入流通企業が広告費の投入に積極的に乗りだしたところ、コンビニが最終的にはキャンペーンを再開したのです。輸入ビールのキャンペーン品目に、アサヒ、キリン、サッポロ、サントリーなどの日本製を含めたのは、2019年8月以来2年10カ月ぶりだそうです。
さかのぼって今年の1月、韓国で「ポケモンパン」が争奪戦となっていました。買えなかった客が店で暴れたり、配送トラックを追いかけ回したりするなど、その人気ぶりは尋常ではなかったと聞きます。
背景としては、子どもの頃に熱中した日本のアニメや漫画のキャラクター製品に、大人になった今でも再び熱中するという層が多く存在し、最近ではポケモンパンのほかにも動画配信サイトでセーラームーンやドラゴンボールといった日本アニメが再燃しているそうです。
このほかにも、日本車や日本映画、不買運動の標的にされていたユニクロや日本食レストランも堅調だと聞いています。
代替商品がない領域に関する人気回復は早いようで、その意味からも行かなければ良さを味わうことができない「訪日旅行」の再燃は想像に易いところでしょう。
3.旅行会社の悲鳴
韓国では今、日本への観光旅行解禁を歓迎する声が上がり、旅行会社へ予約が殺到しているようです。
韓国の旅行大手、ハナツアーによると、日本政府が外国人観光客受け入れ再開を発表後、1週間の日本へのパッケージ旅行の予約数は、発表前の約10倍に増えたそうです。海外旅行ツアー全体の4人に1人が日本旅行の予約者で、大阪、北海道、福岡、東京の順で人気といいます。
大阪・神戸行きツアー千人分以上が2時間で完売した旅行会社もあるそうです。
コロナ禍の2年間、多くの顧客からの訪日に関する問合せに答え続けてきた旅行会社は、過熱する予約への対応でうれしい悲鳴を上げているようです。
ジャパンショッピングツーリズム協会
訪⽇市場チーフアナリスト 神林淳氏
首都圏百貨店において、婦人服・リビング用品バイヤーを経て販売推進部に11年間所属。販売促進・広告・広報・装飾などに携わりながら、地域密着の方針のもと店舗営業計画の策定を行う。2016年、USPジャパンに⼊社。⽇本百貨店協会をはじめ、多くの⼩売事業者のインバウンド対応アドバイザーに従事。近年は東京都派遣型アドバイザー・セミナー講師として、飲食店、観光施設、宿泊施設・交通事業者など多岐にわたるインバウンドサポートを⾏っている。またインバウンドの諸問題解決のために国土交通省と連携した「境港の港湾免税販売」や「横浜港のクルーズ事業活性化」の実証実験を担当。⼀⽅で、経産省と連携して「プレミアムフライデー」の啓蒙および地⽅案件プロデュースも⾏っている。観光庁「世界⽔準のDMO形成促進事業」における外部専⾨⼈材に選定。
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