田川博己会長メッセージ 2021年度 JSTO社員総会【要約】
ご挨拶
昨今の社会情勢を鑑みて、新型コロナが10年先の未来を持ってきたと捉えることもできる。DX(デジタルトランスフォーメーション)が普及し、テレワークやワーケーションが浸透して働き方や休み方が変わった。
組織や企業がこの時代に存在している理由は何なのかと考えている企業は多い。自分たちの原点に戻って考えようという企業は沢山ある。NHK大河ドラマの主人公、渋沢栄一の原点「論語と算盤」を例に、経済一辺倒ではなく社会貢献も含めて考える。近江商人の三方よし(売り手よし・買い手よし・世間よし)、最大よりも「最優」、小さいけれども光る会社がいいなど様々な考え方があるが、我々JSTOも原点に返って考えていきたい。
昨今のツーリズム
2021年4月、メキシコ・カンクーンでWTTC(世界旅行ツーリズム協会)が1年ぶりに開催され、600名が全世界から参加、オンラインでも2000~3000名の視聴者があった。メキシコ観光大臣でWTTC理事長を退任したグロリア・ゲバラ氏が「私たちは2019年には戻らない。前に進む」と表明した。要は元に戻るのではなく、新しい時代を創っていくということ。「旅行産業はこの危機を乗り越え、強くあれ」、「財政社会的に協力し続けること」、ジェンダーの点では「女性がリーダー、起業家、イノベーターとして活動する公平かつ平等な環境が観光業には必要」というカンクーンの女性イニシアティブ宣言を行った。また会合では、コロナの影響はリーマンショックの18倍、失業者は約6000万人、GDPへの寄与額でも4.5兆ドル、以前のほぼ半分が消失したと報告があった。この甚大な被害は、「元に戻すのではなく、新しい時代を創ろう」と表明した。私たちJSTOも新しい時代を創りあげるための議論を進めていきたい。
ショッピングツーリズムの深堀ワーキンググループ
「売るモノの開発」の必要性
ツーリズムの側面から考えると、数ある日本の土産物に、「銘品」としての位置づけを明確にしたい。フランスでは「ルイ・ヴィトン」や「バカラ」など思い浮かぶが、日本では「銘品」が育ちにくい。戦後、アメリカナイズ、ヨーロッパナイズされてきたことや、明治維新以降も日本製品に対するブランディングが充分できていなかった。ショッピングの側面から、日本の「売りモノ」のブランディングを再考したい。
「売り方」の必要性
DX(デジタルトランスフォーメーション)、5G、Society5.0の時代に、単なる売り方がどうなるかということを考えていきたい。
「買わせ方」の必要性
特にビジネスや交流する時の買わせ方の動向について。日本人は海外出張や会議が終わるとすぐに帰国してしまう人が多いが、外国人は商用で外国を訪問したら、必ず日本を見て地域の産品を買って帰る。このような文化や行動特性に対するスキームをどうするか。これはツーリズム側の人にも考えてもらいたい。
ショッピングツーリズムの存在意義・存在価値
サプライチェーンについて、いわゆるモノはあるが、チェーンの部分が点で、チェーンになっていない。ネットワークをどのようにつくるか。地方創生、地方経済への貢献、まちづくり、地域産品のブランディングにも、ショッピングツーリズムの使命を再整理してほしい。
最後に、持続可能やサスティナビリティの観点も重要である。世界で購入されているモノには、100年、200年という長い歴史がある。日本でも例えば工業製品、冷蔵のような消費耐久財が中国ですぐに模倣されるようなこともあったが、日本の冷蔵庫のブランディングはどうだったのか。新しい時代に考えてみる必要があるのではないか。
このような視点で、多くの方にワーキンググループに参加をいただき、論理的に作り上げていくことが必要だ。年齢問わず発言をいただき、最終的にはレポートとしてまとめ政策提言につなげていきたい。ショッピングとツーリズムは運動論が主で、これまで日本の製造界や物流界に対して意見を言うことがなかったが、新しい時代にこそできる可能性がある。
一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO) 会長
田川 博己
1971年株式会社日本交通公社(現株式会社JTB)入社。川崎支店長、米国法人副社長などを経て、2000年取締役営業企画部長就任。その後、常務取締役東日本営業本部長、専務取締役旅行事業本部長を歴任し、2008年代表取締役社長、2014年代表取締役会長、2020年取締役相談役。現在に至る。一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO)会長も務め、旅行業界の発展や地位向上、ショッピングツーリズムの重要性を提起するなど、観光振興発展の一翼を担っている。

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