一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会

訪日市場 Expert eyes(2024年6月8日配信)

訪日市場 Expert eyes(2024年6月8日配信)

今回のコラムは「前編」と「後編」に分けさせていただきましたが、お伝えしたい内容がとても豊富で充実しているからだと勘違いしてはいけません。
「前編」にあたるテキストを書いているうちに着地点を見失ったので、小休止をいただいてこの「後編」を書き始めています…www

「前編」では、訪日観光客に「ゴールデンルート以外」「観光特化地以外」に足を向けていただくためには「地域のスペシャル」が必要だということを書きました。

前編はこちらhttps://jsto.or.jp/news/analyst20240522/


写真=イメージ

 

一般的な「地域のスペシャル」の条件

スペシャルというとものすごく特別感のあるものを想像されてしまうかもしれませんがそうではなく、ある条件をクリアする「モノ」「コト」「場所」であれば良いのだと思います。

1.「地元で人気」…地域に根付き地元の方に愛されている
2.「独自性」…他ではあまりお目にかかれないある程度の独自性が感じられる
3.「リアル体験」…そこに行かなければ見る・食べる・買う・体験することができない
4.「外部視点の価値」…外から見ても魅力的である
といったことです。

ありそうでなかったり、できそうでできなかったり、「そんなものがあれば苦労しない」という声が出てきそうです。
それでもこの条件をクリアしつつ、その価値をしっかり伝えることが重要だと思います。
以下では「価値を伝える」ということに注目したいと思います。


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「地域のスペシャル」を生む、モノのインタープリテーション

自然や文化遺産に関する情報を観光客や訪問者に対して提供し、その地域・スポットの理解を深める手法としてインタープリテーションがあります。
インタープリテーションは「見えるものを情報として伝えることで」「見えない価値までも感じてもらう」ということで、一般的なガイドとは異なるものだと言われています。
これこそが地域のかけがえのない価値を生むものだと考えます。
この技術は、小売店での接客にも応用可能であり、商品の価値を消費者に伝えるのに役立ちます。

1.国立公園等で行われる本来のインタープリテーションの技術は、ストーリーテリングや視覚的な展示など、観光客の興味を引きつける方法を用いています。
→小売店でも同様の手法を用いることで、商品の背後にあるストーリーや製造過程を魅力的に伝えることができます。例えば、商品の生産地や製造方法、デザイナーのストーリーなどを展示やディスプレイを通じて伝えることで、消費者の興味を引きつけ、商品の価値を高めることができます。
2.本来のインタープリテーションでは、その技術を通じて環境保護や持続可能性に関する教育活動が行われています。
→小売店でも同様に、商品の持続可能性や環境への配慮についての情報を提供することで、消費者に商品の価値を伝えることができます。例えば、リサイクル素材を使用した商品や地元の工芸品を取り扱うことで、環境への配慮や地域の文化を尊重する姿勢を消費者に伝えることができます。
3.本来のインタープリテーションでは、その技術を通じて観光客の体験を豊かにする取り組みが行われています。
→小売店でも同様に、商品の試着や体験を通じて消費者に商品の価値を実感させることができます。例えば、商品の使い方や効果をデモンストレーションすることで、消費者に商品の魅力を体験させることができます。

モノのインタープリテーションこそが「地域のスペシャル」を担うものではないでしょうか。

 


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モノのインタープリターは無限に存在する

インタープリテーションを行う人のことをインタープリターと呼びます。
モノの価値を伝えるインタープリターはもともと小売りの現場に多く存在します。

【一般販売員】…モノを買っていただくために販売員は、モノの機能・素材・背景など知っている必要がありますが、その知識が豊かであればあるほどモノの価値に説得力が生まれます。
【実演販売者】…巧みな話術で多くの顧客を惹きつけモノの機能を最大限に伝えるのが実演販売です。
ただ置いてあるだけではあまり売れないモノに、言葉で命を吹き込むのです。
この方たちも立派なインタープリターです。
【職人・生産者】…商業施設で行われる「物産展」には各地からモノ作りのプロフェッショナルが訪れますが、物産展の魅力は「各地のモノが手に入る」ということだけではありません。お客さんにとって、モノを作る職人・生産者との触れ合いもとても魅力的です。

各地域でそれぞれが誇るモノを展開し、そこに必ずインタープリターとなる人が存在し、モノだけでなくその「モノづくりのストーリー」「背景となる歴史」「育んできた地域の魅力」などを伝えることで、かけがえのない「地域のスペシャル」を生むのだと思います。

 

ジャパンショッピングツーリズム協会
訪⽇市場チーフアナリスト 神林淳氏

首都圏百貨店において、婦人服・リビング用品バイヤーを経て販売推進部に11年間所属。販売促進・広告・広報・装飾などに携わりながら、地域密着の方針のもと店舗営業計画の策定を行う。2016年、USPジャパンに⼊社。⽇本百貨店協会をはじめ、多くの⼩売事業者のインバウンド対応アドバイザーに従事。近年は東京都派遣型アドバイザー・セミナー講師として、飲食店、観光施設、宿泊施設・交通事業者など多岐にわたるインバウンドサポートを⾏っている。またインバウンドの諸問題解決のために国土交通省と連携した「境港の港湾免税販売」や「横浜港のクルーズ事業活性化」の実証実験を担当。⼀⽅で、経産省と連携して「プレミアムフライデー」の啓蒙および地⽅案件プロデュースも⾏っている。観光庁「世界⽔準のDMO形成促進事業」における外部専⾨⼈材に選定。

本件に関するお問い合わせ
  • MAIL:pr@jsto.or.jp

  • 情報戦略・広報部 池田大作

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